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フォトコンテスト「Moments in Japan ―私が出逢った“日本”―」受賞作品が決定

 

 

多言語サイトnippon.comが2024年2月5日から3月13日まで開催したフォトコンテストで、応募総数5088作の中から受賞作が決定した。

 

審査は写真投稿サイト「東京カメラ部」による予備選考の後、大西成明氏・芳賀日向氏・山田愼二氏の写真家3人が最優秀賞、「美しい日本」賞、「おいしい日本」賞、「リアルな日本」賞を決定。佳作にあたる「7つの言語」賞はnippon.com各言語の担当者が選考した。

 

受賞14作品を審査員の講評と合わせて紹介する。

 

 

■最優秀賞

撮影:高橋秀治

 

「縁側夏の一時」 高橋秀治さん

 

普段の家族写真です。これからも思い出を未来につなげていければと思います。

 

山田氏:母の実家の縁側で親戚と並んでスイカを食べた、幼い夏の日を思い出します。2人の実に自然な表情や浴衣の色のバランス、足元でおとなしくしている柴犬に蚊取り線香や軒下のタマネギの配置、フレーミングや空気感、どれをとっても完成度が高い。

 

芳賀氏:細部までこだわって、作者の心に残っている素晴らしい思い出を再現したように感じました。しっかりと表情を写した作品が少ない中、画面を構成しているものすべてが2人の笑顔を引き出している点が秀逸。

 

大西氏:なんともおおらかで豪快、ケラケラという笑い声が聞こえそうな気持ちいい写真。一昔前の「ニッポンの夏の定番」といえる小道具が集められています。あざとさを感じないのは、母と娘の圧倒的な存在感に負うところ大です。

 

 

■「美しい日本」賞

撮影:河本眞一

 

「送り火」 河本眞一さん

 

長野県の妻籠(つまご)では盂蘭盆会(うらぼんえ)の8月16日、午後7時になると家の前で一斉に「送り火」をたく風習が残っています。

 

芳賀氏:お盆の間にあの世からお戻りになるご先祖さまを楽しませ、送り火でお帰しする…町並み保存運動に取り組む妻籠は、美しい日本を継承しています。雨上がりの路面に映り込む火が、清らかな日本の心を印象付けました。

 

撮影:中川己年夫さん

 

「河蛍」 中川己年夫さん

 

水中に宝石か蛍をちりばめたかのような、息をのむ光景。愛知から高知まで700キロ車を走らせて深夜、この目と写真に焼き付けました。

 

芳賀氏:毎年12~1月ごろに四万十川では、光に集まるシラスウナギを手網ですくい上げる伝統漁が解禁となります。色とりどりの集魚灯を備えた漁船100隻ほどが見せる幻想的な風景は、今や冬の風物詩。同じ題材が複数ある中、光の美しさが格別でした。

 

 

■「おいしい日本」賞

撮影:rui4050

 

「おいしいおもち」 rui4050さん

 

京都のお茶屋で、娘がお気に入りの磯辺餅をほおばる瞬間です。

 

山田氏:少女と磯辺焼き餅の組み合わせがどこか新鮮。撮影を意識せず、とても自然な表情でライブ感たっぷり。口にした餅が伸びている瞬間を逃さずにシャッターを切ったこと、被写界深度が浅めなのもとても効果的です。

 

撮影:ハマキッド

 

「冬の三浦海岸」 ハマキッドさん

 

夏は海水浴客でにぎわう三浦海岸(神奈川県)ですが、この大根の天日干しは冬の風物詩です。

 

山田氏:砂浜で大根を干す光景は目新しい。故郷の新潟では、大根をわら縄でつなげて軒下に干してたくあんにします。日本中、場所が変われば作り方も違う、郷土ならではの風習を感じました。

 

 

■「リアルな日本」賞

撮影:アンディ タマ@anditamago

 

「ごんの秋祭り」 アンディ タマ@anditamagoさん

 

愛知県・半田商業高校生プロデュースの結婚式。児童文学『ごんぎつね』作者の新美南吉記念館で式を挙げ、彼岸花のじゅうたんの上を歩く花嫁行列がすてきでした。

 

大西氏:画面の下半分を真っ赤な彼岸花が埋め尽くし、初秋の絹雲たなびく川の土手を花嫁行列が進んで行きます。まるで「狐の嫁入り」の幻想絵巻。前後に続く長い行列を感じさせない、思いっきりのいいフレーミングが見事です。少子高齢化が進み結婚人口が減少の一途をたどる半田市の切実な地方再生の願いは、そのままニッポンのリアルな叫びでもあります。

 

撮影:山神拓哉 (@maybeeeeem)

 

「或る、東京の一日」 山神拓哉 (@maybeeeeem)さん

 

普段何気なく見ている景色でも、ふと見上げてみるとドラマが。東京の一コマをビルの隙間から切り取りました。

 

大西氏:林立するビルの隙間に滑り込むように侵入してくる、幸せの黄色い検査車両「ドクターイエロー」。その優美でセクシーな肢体を、絶妙な切り取りで瞬間凍結。会心作になりましたね。一瞬のチャンスを今か今かと待ちわびる心臓の高鳴りが伝わってきます。前景のビルのライン、中景のドクターイエローと彼を盛り立てる“助演女優賞”はとバス、そして後景のビルと青空。縦位置写真の天から地まで見どころ満載です。

 

 

■「7つの言語」賞

撮影:TOYOP

 

「五穀豊穣を願って」 TOYOPさん

 

農家さんを含め地元の人たちがしっかり管理しているからこそ残されていく風景。写真に収めてみると、きれいな景色の中で生活できていると改めて実感します。

 

nippon.com英語担当:手前の実る稲穂、赤い鳥居、ポツンと立っている神社、そして高くそびえる緑の木のこずえと青空。きれいですね。じっくりのぞくと奥が深い。横に古びた建物、電線と電信柱が目に入り、後ろに高速道路がかなたに伸び、山の上には送電塔が点々と立っています。田舎旅に出たくなる一枚です。

 

撮影:春木悦代

 

「人馬疾走」 春木悦代さん

 

京都三大祭りの一つ「葵祭」の前儀、下鴨神社の流鏑馬(やぶさめ)神事で射手が弓を引き絞り、矢を放つ寸前のシーンです。疾走する馬の迫力と射手の妙技に圧倒されました。

 

nippon.com中国語(簡体字)担当:赤い服と純白の馬、背景の緑とのコントラストが鮮やか。唐代中国に影響を受けた平安装束は、両国の深い関係を思い起こさせます。

 

撮影:yukkey(@yukkey.inc)

 

「WHITE BREATH」 yukkey(@yukkey.inc)さん

 

凍えそうな季節に富山県にある五箇山の相倉合掌造り集落を撮影。雪景色と民家から漏れる明かりが幻想的でした。

 

nippon.com中国語(繁体字)担当:「雪」「集落」が日本の昔話に出てくるワンシーンのようで、見た人の心に温かさを感じさせる一枚。現代日本のイメージとのギャップが大きく、想像力をかき立てます。

 

撮影:中村祐太(yuta_photo)

 

「火祭り」 中村祐太(yuta_photo)さん

 

日本一危険な火祭りといわれている「鳥羽の火祭り」(愛知県)で、手に汗握る瞬間を捉えました。

 

nippon.comフランス語担当:日本らしい伝統と美に加え、人々の生のエネルギーが感じられる一枚。巨大な火柱が強烈なインパクトを放ち、そこへ勇猛果敢に飛び込む命知らずな男たちの異様な熱気が臨場感たっぷりに伝わってくる。夜の闇を背景にオレンジに輝く炎、白い装束、背に大書された墨文字の3色によるシンプルさも美しい。

 

撮影:深見知史

 

「夏の忘れもの」 深見知史さん

 

夏の思い出にと息子を連れて行った駄菓子屋さん。懐かしい駄菓子やおもちゃに息子以上にワクワクし、子どもの頃の記憶がよみがえってきました。

 

nippon.comスペイン語担当:昔ながらの駄菓子屋さんの涼しげな影の中で、虫捕り籠を提げた子どもにフォーカスして、懐かしい雰囲気を表現。世代を超えて「日本の夏」をイメージできるシーンです。

 

撮影:けんけんぱ

 

「富士赫々(かっかく)」 けんけんぱさん

 

燃えるようなコキアに焼かれ次第に赤く色づく空。その温度がじわじわと伝わっていき、少しずつ火照っていく富士山を想像して現像しました。

 

nippon.comアラビア語担当:日本の象徴的な存在である富士山は、壮大な山容や豊かな自然に彩られた風景が魅力で、多くの人々に感動を与えています。日本の美しさや神秘性が伝わる一枚です。

 

撮影:田中雅之

 

「変身」 田中雅之さん

 

「米原曳山まつり」(滋賀県)で子ども歌舞伎の役者を撮影。友達とはしゃいでいた普通の小学生が、化粧と衣装で役者の顔に変わりました。

 

nippon.comロシア語担当:いかにも日本らしい和装をまとった子どもが愛らしい。祖母と孫のようにも見えて、子どもへの愛情や伝統の継承といった普遍的なテーマも感じました。

 

 

総評

 

山田氏:単写真は第一印象、見る側を瞬時に引きつけるインパクトがとても大切。スナップ写真でいえば、光と影、色、形に感動してシャッターを切った作品に魅力を感じます。応募作には身近な風景、変貌する都市・街のスナップが少なかったように思え、今後に期待します。

 

芳賀氏:どの写真もきれいでしたが、色にばかり目が行ってしまい、撮影者のメッセージ性が伝わってきません。主催者nippon.comはビジュアルコンテンツ「Images」等で、多様な「日本の今」を海外に発信しているサイト。その方向性を理解した上で、自分が感じる日本を表現していただきたかった。皆さんは十分な技術をお持ちですので、オリジナリティーあふれる作品を切望します。

 

大西氏:写真に仕上げる“うまさ”はかなり達者なのですが、残念ながら魂を入れ忘れているような写真も多く見られました。自分が慣れ親しんだ「定形」に急ぎ向かうあまり、寄り道したり、変化球を投げたりといった、遊び心の躍動があまり見られなかったのは残念でした。日本の深層を照射し、語りかけてくるような写真の登場を心待ちにしています。

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